基本的な事柄
貧血は、「末梢血中のヘモグロビン濃度が基準値以下に低下した状態」と定義されます。貧血は原因によってさまざまな種類がありますが、その一つである鉄欠乏性貧血は、鉄が欠乏することによって起きる貧血で、ヘモグロビンを含む赤血球が小さく、また、含まれるヘモグロビンの濃度も低くなる「小球性低色素性貧血」に分類されます。最も頻度が高く、一般的に若年から中年の女性に起きやすいといわれており、ヘモグロビン(血色素)をつくるために必要な鉄の不足が大きな原因です。ヘモグロビンが少ないために酸素を運搬する力が弱まり、顔色が悪くなったり、動悸(どうき)や息切れ、めまい、頭痛、疲れやすいなどの自覚症状が現れてきます。
鉄が欠乏する原因
①鉄の摂取量が不足しているとき(偏食、朝食ぬき、極端な節食が続いている、胃切術後等で鉄の吸収が悪くなっている時など)
②鉄の必要量が増加しているとき(成長が著しい思春期、妊娠、出産、授乳期など)
③栄養のバランスが悪いとき(造血に必要な栄養素(たんぱく質、鉄、造血ビタミンのB6、B12、葉酸)が不足していたり、鉄の吸収をよくするビタミンCなどの不足)
④大出血や慢性出血により鉄の喪失が著しいとき(胃潰瘍や十二指腸潰瘍、痔などの出血、月経など)
鉄の推奨量
鉄分の推奨量※1は、成人(18歳以上)女子で1日(月経なし)6.0~6.5ミリグラム、(月経あり)10.5~11.0ミリグラム、成人(18歳以上)男子で7.0~7.5ミリグラムです。また、妊娠中や授乳中は鉄の必要量が増加します。
※1 日本人の食事摂取基準(2020版)より
食生活のポイント
鉄は吸収率の低い栄養素といわれています。鉄欠乏性貧血を予防するためには、毎日の食事から鉄分が不足しないよう十分に取ることが必要です。特に、鉄の必要量が増加する時期は不足しやすくなるので気を付けましょう。
- 食事は栄養のバランスを考え、主食、主菜、副菜がそろった食事を毎日3食きちんと食べる
- 鉄を多く含む食品を十分に取る
鉄はレバ-や赤身の肉類、あさり、かき、血合いの多い魚、大豆製品、緑黄色野菜、海藻などに多く含まれています。特に、ヘム鉄の多い肉類や魚類は有効です。 - たんぱく質を十分に取る
魚、肉、卵、大豆製品、乳製品などのたんぱく質を多く含む食品を使った料理を毎食バランス良く食べるように心掛けましょう。 - 鉄の吸収利用を良くする
①酢、柑橘類、梅干しなど酸味のあるものや香辛料を使って胃液の分泌を良くする。
②ビタミンCの多い野菜、いも、果物などと一緒に取って吸収を促進させる。
③造血成分といわれるビタミンB12(レバ-、魚の血合い、納豆など)、葉酸(緑黄色野菜など)ビタミンB6(いわし、かれい、卵黄など)、銅(貝類、レバ-、ごまなど)などと一緒に取る。 - 食事中の緑茶や紅茶、コ-ヒ-などは控える
最近の研究によると、タンニンの影響をそれほど気にしなくても良いようですが、お茶類に含まれるカフェインを考えて控えたほうが良いようです。
(一社千葉県薬剤師会HPくすり90飲料とお薬の相互作用 参照) - 料理は手作りを心掛ける
インスタント食品や調理済み食品、出前の料理などは使用されている材料が分かりにくいだけでなく、栄養のバランスの偏りが生じやすくなります。全く利用しないのは現実的ではありませんが偏ることなく上手に利用しましょう。
鉄欠乏性貧血の予防は、今日、鉄を多く取ったから明日は少なくてよいというものではありません。いろいろな種類の食品を毎日食べる食習慣が鉄不足を解消するポイントです。また、貧血は重大な病気の原因になることもあります。疲れやすい、めまい、立ちくらみ、息切れや動悸がするなどの自覚症状を感じたときは、早めに医療機関で診察を受けるようにしましょう。
(更新 2024.12)