1945年(昭和20年)代までは、日本人の死亡原因の大部分を結核や肺炎、下痢・腸炎などの感染症が占めていました。抗生物質の発見をはじめとする医学・医療の進歩と、経済の復興、生活環境や食糧事情の改善などにより、感染症は激減し、特に、乳幼児の死亡率は大きく減少しました。
しかし、1955年(昭和30年)代後半から1965年(昭和40年)代になると、食生活の欧米化が見られるようになり、また、家事の電化や交通機関の発達などにより体を動かすことが次第に減少し、心臓病や糖尿病、高血圧などの生活習慣病(成人病)が増加するようになってきました。
わが国は、世界有数の長寿国になりましたが、一方では食生活の乱れや運動不足などから生活習慣病が増加し、医療費は増加の一途をたどり、また、寝たきりや認知症の介護などが急速に進む少子高齢社会にあって大きな社会問題になっています。
元気で長生きするためには、まず、がん、糖尿病、心臓病などをはじめとする生活習慣病の予防が重要であり、そのためには、日ごろの食生活が大切です。
食事はもともと生命の保持と健康維持のための基本的な人間の営みです。
日々の生活の善しあしが、一生の健康にかかわってきます。“予防に勝る治療なし”といいます。毎日の食事に気を配り、自分の体力に応じた無理のない運動を心掛け、生活を規則正しくすることが自然治癒力を高め、病気に対する抵抗力を増すことにつながります。そして、このことがなによりも生活習慣病の一次予防そのものなのです。
この項では、生活習慣病をはじめとし、食生活と関わりの深い病気について、その予防をするうえでのポイントを取り上げてあります。