乳児期の食事と健康

 乳児期は、成長・発育が目覚ましい時期であり、一人一人の成長・発育に差が大きいことから、月齢や年齢で一律に判断するのではなく、それぞれの成長・発育状態、健康状態・栄養状態に合わせての対応が大切です。

授乳は静かな環境で、しっかり抱いて、優しく声をかけながら

 授乳は赤ちゃんの心とからだを育てます。温かいふれあいを通して、赤ちゃんの心は育ちます。授乳を通して、親は繰り返し赤ちゃんの要求に応えることで、赤ちゃんを観察して対応していく力を育み、赤ちゃんは要求を満たす心地よさを味わうことで心の安定が得られ、食欲を育んでいきます。

   母乳栄養は母子にとって基本であり、

1.消化吸収がよく、代謝への負担が少ない

2.感染症の発症及び重症度を低下させる

3.母子関係が良好に形成される

4.出産後の母体の回復を早める

5.経済的で、簡便、緊急に対応できる

   など多くの面で優れていますが、母乳の量が不足したり授乳が不可能なときなどは、育児用ミルクを利用した混合栄養または人工栄養にします。

   一人一人の子どもがお腹のすくリズムが持てるよう、それぞれの状態に応じた授乳の時刻、回数、量、温度に配慮することが必要です。

離乳は一人一人に合わせて

 離乳とは、成長に伴い母乳又は育児用ミルク等の乳汁だけでは不足してくるエネルギーや栄養素を補完するために、母乳や育児用ミルク等の乳汁から幼児食に移行する過程をいいます。

   この間に乳児の摂食機能は、乳汁を吸うことから食物をかみつぶして飲み込むことへと発達し、食べられる食品の種類や量が多くなり、調理形態も変化して、自分で食べるという自立へと向かっていきます。

   乳児は、生後5~6か月になると乳汁だけでは、エネルギ-やたんぱく質、鉄分などの栄養素が不足するようになります。このため、乳汁以外の食物から栄養素を摂取することが必要になります。

   離乳食には、

1. 母乳やミルクだけでは足りない栄養素を補う

2. 食べものを噛みつぶして飲み込むことを練習する

3. いろいろな食べものを食べることにより味覚を育てる

4. 食習慣を身につける基礎になる

   などの目的があります。

   離乳食を始める目安は

 首のすわりがしっかりして寝返りができ、5秒以上座れる、食べものに興味を示す、スプーンなどを口にいれても舌で押し出すことが少なくなるなどの発達の状態をみたうえで、生後5~6か月頃が適当です。

   離乳食は食べ具合や便の状況をみながら少しずつ進め、満1歳を過ぎたころには、形のある食べ物を食べることができて、エネルギ-やたんぱく質など栄養素の大部分を食物から摂取できることを目標に進めます。

   成長の段階にあった固さにしましょう。

   調理にあたっては、新鮮な材料を用い、十分に加熱することを基本とします。

   はちみつは乳児ボツリヌス症予防のため、満1歳までは使用しないようにしましょう。

離乳の進め方

離乳初期(生後5~6か月頃)

   子どもの様子をみながら、1日1回1さじずつ始めます。なめらかにすりつぶした状態のものを「ゴックン」と飲み込むこと、食べものの舌ざわりや味に慣れることの練習です。あせらずゆっくりと進めていきます。つぶしがゆから始め、すりつぶした野菜、慣れてきたら、つぶした豆腐や白身魚・固ゆでした卵黄等を試し、少しずつ量や種類を増やします。味つけはしません。  母乳または育児用ミルクは、授乳のリズムに沿って、子どもの欲するままに与えます。

離乳中期(生後7~8か月頃)

   離乳食を開始して1か月を過ぎたころから食事の回数は2回食に進め、食事のリズムをつけていきます。舌でつぶせるくらいの軟らかく煮た物を「モグモグ」口を動かして食べる練習をします。おかゆはつぶさず、10倍がゆから7倍、5倍(全がゆ)へと少しずつ水分量を減らしていきます。野菜、豆腐、白身魚、脂肪の少ない鶏肉など食品の種類を増やしていきます。1回の食事に穀類、野菜・果物、たんぱく質性食品を組み合わせた内容のものとします。料理の味付けは、だし汁や塩、醤油、砂糖をごく少量使用し、風味付け程度に味付けをします。また、料理にとろみをつけると食べやすいです。離乳食を食べた後に母乳又はミルクを飲ませます。離乳食とは別に授乳のリズムに沿って、母乳は子どもの欲するままに、ミルクは1日3回程度飲ませます。

離乳後期(生後9~11か月頃)

   食事のリズムを大切に、1日3回食に進め、歯ぐきでつぶせる程度の固さのものを「カミカミ」して食べる練習をします。多くの食品を使用して、料理にも変化をつけます。鉄分が不足しやすくなるので、鉄分を多く含むレバー、肉、赤身の魚などを十分に与えるようにします。大人の食事からの取り分けもできますが、薄味に仕上げます。汁ものをコップや汁わんから飲む練習を始めます。

   このころから、家族一緒の食卓も楽しめるようになります。

   食欲に応じて、離乳食の量を増やし、離乳食の後に母乳またはミルクを与えます。また、9か月以降、鉄不足のリスクが高い場合などに必要に応じて牛乳代替品としてフォローアップミルクを使用してもよいでしょう。
   離乳食とは別に授乳のリズムに沿って、母乳は子どもの欲するままに与え、ミルクは、1日2回程度与えます。  自分で食べる楽しみを手づかみ食べから始めます。手づかみ食べとは、食べものを目で確かめて、手指で感触をつかんで口まで運び、前歯を使って自分なりの一口量を噛みとり奥の歯茎で噛みつぶすという目と手と口の協調運動であり、摂食機能の上で重要な役割を担うものです。一口大やスティック状にした食べもので十分練習をさせましょう。

離乳完了期(生後12~18か月頃)

   食事の回数は3回の食事と間食(おやつ)を与え、食事から十分な栄養が取れるようになります。料理は、歯ぐきで噛める固さのもので、幼児食に近づけていきます。

   ミルクを哺乳瓶で飲むことから、コップで牛乳を飲むことに切り替えます。

     手づかみ食べが上手になり、自分で食べようとする意欲がみられるようになったら、スプーンを持たせ、スプーンですくいやすい安定した食器を使用し、食べものをスプーンにのりやすい大きさに切って盛り付けてあげましょう。

   盛り付けや色彩も考慮して食べる楽しさの体験を増やしていきます。子どもの気持ちを大切にすることにより、自分で食べる意欲が育ちます。

   形のある食べものを噛みつぶすことができ、栄養の大部分を母乳、ミルク以外の食べものからとれると離乳は完了です。

  離乳の進め方の目安HP

厚生労働省ホームページ:「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改訂版)」より抜粋

                                    (更新 2024.12)