学校給食の役割

学校給食の変遷

   学校給食は、1889年(明治22年)に山形県鶴岡市の私立忠愛小学校において、貧しい家庭の子どもたちに米飯を無料で給食をしたのが初めとされています。戦前までの学校給食は、貧困児童の救済を主な目的として運営されてきました。

   全児童を対象とした公的な学校給食が全国的に始まったのは、戦後の1947年(昭和22年)1月からです。

   1946年(昭和21年)のクリスマスの日に、日本の子どもたちにと脱脂粉乳、小麦粉、缶詰などが連合軍総指令部(GHQ)およびララ委員会から贈られました。「栄養不良の日本の子どもを救う必要がある」というGHQの勧告に基づいて学校給食が再開されることになり贈られたものです。

   1949年(昭和24年)に入るとユニセフによる無償のガリオワ資金が供与されるようになり、脱脂粉乳によるミルクのみの給食やおかずのみの給食(主食持参)も含め、パン・ミルク・おかずによる学校給食が全国に普及していきました。

   1951年(昭和26年)9月、日米講和条約の調印に伴いガリオワ資金が打ち切られることになり、給食を実施する学校が減少しましたが、政府は、学校給食を恒久的なものにするため、1954年(昭和29年)6月、学校給食法を制定し学校給食の目的や目標、国庫負担などが明確になりました。

   1965年(昭和40年)代になって米飯給食が行われるようになりましたが、施設・設備が十分でなかったこともあり、献立の内容をいろいろ工夫しながら行われました。

学校給食の役割

   2008年(平成20年)6月に学校給食法が大幅に改正され、2009年(平成21年)4月より施行されました。

   改正の目的は、学校における食育の推進を図る観点から、学校給食の目標を見直し、栄養教諭等がその専門性を生かして、学校給食を活用した食に関する指導を行うとともに、文部科学大臣が定める望ましい基準に照らして、学校給食の衛生管理を定めるものとします。

   学校給食法の改正にともない、学校給食の目標が4つから7つになり、学校給食は教育の一環として実施していくことが明確になりました。

学校給食の目標

  1. 適切な栄養の摂取による健康の保持増進を図る。
  2. 日常生活における食事について正しい理解を深め、健全な食生活を営むことができる判断力を培い、望ましい食習慣を養うこと。
  3. 学校生活を豊かにし、明るい社交性及び共同の精神を養うこと。
  4. 食生活が自然の恩恵の上に成り立つものであることについての理解を深め、生命及び自然を尊重する精神並びに環境の保全に寄与する態度を養うこと。
  5. 食生活が食にかかわる人々の様々な活動に支えられていることについての理解を深め、勤労に重んずる態度を養うこと。
  6. わが国や各地域の優れた伝統的な食文化についての理解を深めること。
  7. 食料の生産、流通及び消費について、正しい理解に導くこと。

   食糧難の時代は不足する栄養素の補給に重点が置かれていましたが、現在は時代の変化に合わせ法律に定める目標が達成できるよう創意・工夫に努めています。

   日本は世界一の長寿国になりましたが、一方では、生活習慣病などの増加による医療費の増加が社会問題となり、また、豊かさゆえに、偏った食事による肥満ややせ願望による健康障害などが生じています。

   学校給食は、自分の健康を考えた食生活を送ることのできる習慣を身に付けるための「健康教育」としての役割を持ち、食事を好き嫌いだけで選ぶのではなく、健康を考え自分に適した食事と礼儀や人を思いやる人間関係を育てることを目的に、自分の食べる量を考え、他の人のことも考えて料理を取るバイキング方式やカフェテリア方式など、選択できる給食が多くの学校で行われています。

   また、使われている食品の生産や流通に関する「社会科」の学習となったり、給食の献立を参考に自分の献立を考えて調理する「家庭科」や食材料の生産者、給食を作っている調理員に対する感謝の心を育てる「道徳」の学習にもつながっています。

   学校によっては、「姉妹都市」の国々の外国料理を給食に取り入れ、その国の料理から歴史・文化・気候風土などを理解するのに役立てています。

   春は筍ご飯、秋は栗ご飯、そして千葉の海で取れたいわしを使った「さんが焼き」や「つみれ汁」などの料理は、千葉の食文化や郷土料理の伝承の意味合いを込めて献立に加えています。家庭の食事の簡素化が食生活の問題点として指摘されていますが、一層進行した折りには、子どもたちが大人になったとき、「おふくろの味」や「ふるさとの味」を思い出すとしたら、学校給食の味になってしまうのかもしれません。

   1996年(平成8年)に全国的な規模で発生した「腸管出血性大腸菌O157」による食中毒は、学校給食にいろいろな問題を投げかけました。献立の内容も、従来は生食であったサラダ類もゆで野菜に変更したり、デザ-ト類やフル-ツなども種類や調理方法を制限し、また、卵や肉、魚などの料理も十分に火が通るように気を付け、衛生的で安全な給食を従来にも増して重視しています。現在、HACCPの考え方を導入し、子どもたちに安心安全な食事の提供が徹底されています。

 2013年度(平成25年)の調査結果では、児童生徒の約4.5%が食物アレルギーの有病者であり、一人の児童生徒が複数のアレルゲンを有している場合もあります。2015年(平成27年)3月には、急増する食物アレルギーを持つ児童生徒に対応するため、文部科学省から「学校給食における食物アレルギー対応指針」が示されました。さらに、2020年(令和2年)3月、文部科学省監修のもと、日本学校保健会より「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」が出されました。約10年ぶりの改訂です。学校給食での 食物アレルギー対応は児童生徒の安全確保を第一に、学校設置者が方針を定めて、マニュアルに沿って行う必要があります。
 今後も、学校給食を通じて子どもたちが食べることの大切さ、楽しさを知ることができるよう、食環境の整備や食に関する指導をすすめるとともに、給食を生きた教材として活用し学校給食が望ましい食習慣の習得と健康づくりにつながるよう願っています。
                                    (更新 2024.12)