基本的な事柄
一般に30歳を過ぎると諸臓器の発育は終わって維持の段階に入り、栄養状態や運動・休養などの状況によっては衰退過程に入ると考えられており、精神的ストレスや不規則な生活から健康上のさまざまな問題を生じやすくなってきます。
労働の軽い人や運動不足の状態においてはエネルギ-の摂取過剰になりやすく、肥満や生活習慣病が現れてくる時期でもあります。2013(平成25)年以降、男性20歳以上の肥満とされる割合が3割で増加傾向となっています。(国民健康栄養調査)
仕事中心の生活から食事が不規則になりがちで、動物性たんぱく質や脂質の過剰、野菜の不足、食塩の取り過ぎ、アルコ-ル飲料や甘味飲料の飲み過ぎなどが生活習慣病を誘発する原因となっています。バランスの取れた規則正しい食事が、生活習慣病の予防や健康づくりの第一歩として重要になります。
国民健康栄養調査の結果によると、栄養上の問題点として次の事項が指摘されています。
栄養の摂取状況
- 動物性たんぱく質・動物性脂肪が増加している。
- 全年齢層においてカルシウムが不足している。
- 女性は鉄分も不足している。
- 総摂取エネルギ-のうち脂質からのエネルギ-の割合(脂質エネルギ-比)の20歳以上の平均値は28.7%である。しかし、脂質異常症の総患者数は増加している。
- 食塩の摂取量が(食塩摂取目標量:成人男性7.5g未満、女性6.5g未満)全平均約9.8g(男性10.7g、女性9.1g)摂取し、10年でみると減少しているが、いまだ目標値に届いていない。
食品の摂取状況
- 全体的に米の摂取量が少なく、でんぷんや食物繊維の不足の一因になっている。
- 肉類の摂取が多く、動物性たんぱく質や動物性脂質の過剰の原因になっている。
- 20歳以上では、乳・乳製品の摂取量が少なくカルシウム不足の原因になっている。
- 野菜の摂取量は成人で平均270.3gであり、1日当りの目標値である350gを下回っている。
食事の状況
- 主食・主菜・副菜を組み合わせた、いわゆる栄養バランスの取れた食事を1日に2回以上食べることが「ほとんど毎日」の割合は全体で45~47%(目標50%)で、男女とも若い世代ほど低く、70歳代以上では高い。
- 外食・持ち帰り弁当を定期的に利用しているものは、ほとんど利用していないものより主食・主菜・副菜を組み合わせた食事の頻度が少ない。(2019(令和元)年国民健康・栄養調査)
- 朝食の欠食は20歳代で男性は29.9%、女性は18.9%、30歳代では男性28.3%、女性は12.7%であった。年齢階級別では男女とも20歳代が最も多い。(2019(令和元)年国民健康・栄養調査)
運動の状況
- 歩数の平均値は、男性が6,6628歩、女性が5,659歩、運動習慣のある人は、男性36.2%、女性28.6%で、年齢別でみると、男性30歳代、女性20歳代が低い状況である。
食事のポイント
以上のことを考慮した中高年者のための食事の基本は次のように要約することができます。
- 1日3食を主食・主菜・副菜をそろえ、決まった時間にしっかり食べる。
- 多数の食品を使用して食事を作り、良く噛んで食べる。
- 主食はご飯・パン・めん類のいずれでもよいが、適正量を取って、炭水化物の不足や取り過ぎにならないようにする。
- 主菜は肉料理・魚料理・卵料理・大豆製品の料理のうちのいずれかの料理で、肉料理に偏らないようにする。
- 副菜はいも・野菜などを使用して作り、乳製品・小魚・海藻などを使用した料理も加えるようにする。
- 料理に使用する油脂はできるだけ植物油を使用し、また、しょうゆやみそ、食塩などの調味料の使用量は控えて食塩の過剰摂取にならないように心掛ける。
- 間食を取る場合は砂糖や脂肪の多い菓子類は食べ過ぎないようにし、牛乳や果物を取るようにする。また、砂糖の多いドリンク類は飲み過ぎないようにし、アルコ-ル飲料はほどほどにする。
- できるだけ運動してエネルギ-を消費し、食事内容に余裕を持たせる。
- 肥りぎみの人はときどき体重を測定して肥満の予防に心掛ける。肥満のための食事の減量は主食と主菜または油料理を減らしてエネルギ-を減らし、野菜類や海藻類を多くする。主食のみを減らすのはよくない。
以上が食事の基本です。個人差も大きいので自分の生活を見直し、工夫しましょう。
参考文献:厚生労働省 (2019年)令和元年国民健康・栄養調査
(2020年)令和2年・(2021年)令和3年新型コロナウイルス感染症の影響により調査中止
(2023年)令和5年国民健康・栄養調査 結果の概要(2024年11月発表)
農林水産省 若い世代の食事習慣に関する調査結果の概要 (2019年11月調査)
(更新 2024.12)